『ダンケルク』(2017米) レビュー
☆☆☆☆ 5点満点中
「絶対絶命の地”ダンケルク”の40万人.残り時間わずか.生き抜け.若者たち.」
浜辺で味方の船を待っている兵士たちの頭上から、無慈悲に敵の戦闘機に攻撃されるシーンが恐ろしくも美しかった。
いったん敵機が去っても油断できない。
気がつくとスクリーンの兵士たちと一緒になって、遠くの空からプロペラの音が聞こえやしないかと、私もドキドキしながら耳をすませていた。
粗探しをしたくても欠点が見当たらない。
反対に、とくにこれといった山場もなく、たんたんとしているともいえるから、もうひとつ物足りなさを感じてしまうかも知れない。
市街地では敵の銃撃から走って逃げる。
浜辺では空から爆撃を受け、神に祈り、身を伏せる。
海上では乗っていた船が魚雷攻撃に遭い、命からがら脱出を図る。
単純明快なストーリーなのに引き込まれるのは、映像がやけに洗練されていてオシャレだから。
耳をつんざくような爆発音のあとに、不気味な静けさが訪れる。
嵐の前の静けさで、次は何が起こるか不安でならない。
セリフは少ないながらも機知に富んでいて、短い言葉のやり取りから登場人物それぞれの人となりが、しっかり浮かび上がるように出来ている。
なぜ民間船の船長が、自らの身を危険に曝してまでダンケルク港に向かったのか。
この人物については、なるほど、そういう理由があったのか、と後に種明かしされることになっている。